3歳時の他府県からの転入を機に、Sくんはくれよんの利用を開始されました。
転入前にも療育施設に通園されていましたが、感覚過敏のため空調の匂いや重ね着に対しての苦手意識、季節のかわり目の衣替えへの抵抗が強く、日々の生活のなかでSくんもご家族もしんどさを感じられていました。
転入後の幼稚園生活でもSくんの負担は大きく、登園を渋ることもあったため、幼稚園と併行で週2日、くれよんを利用されることになりました。
をねらいとして、マンツーマンで保育者との信頼関係を築くことも大切にしていました。
幼児期は睡眠のリズムが整いにくく、夜間に十分な睡眠がとれずにご家族にとっても大変な時期でした。そんななか、ご両親は機械類が好きだったSくんのために休日にホームセンターに出かけるなど、Sくんの興味・関心に寄り添うように過ごされていました。
くれよんでもSくんの過敏さの軽減や、生活リズムを整えるために散歩など外遊びを十分に行うこと、好きな遊びを楽しみ満足するなど、日中の活動が充実することを優先しました。
Sくんならではのエピソードとして、上下水道に興味のあったSくんに「マンホールを見に行こう」と誘って散歩に出かけた話や、幼稚園で飼っていたウサギとの触れ合いが精神的な安定につながったことを受けて、くれよんでも積極的に生きものや自然に触れる機会をもつようにした話がいくつもあります。また、夏場はクーラーの入った部屋で食事ができない(空調の匂いへの過敏さがあった)Sくんのしんどさを受け入れ、廊下に机を出して担当の保育者と食事をとることもしていました。
そのようなSくんの興味・関心に寄り添い、楽しい生活を送るためのサポートをご家族とも協力してすすめていきました。
年長組になってからは仲良しの友だちもでき、再会をハグで喜び合ったり、苦手だった「エースくん」(くれよんの建物内にいる療育犬)にも親しく接することができるようになるなど、大きく成長がみられた1年となりました。
就学前には、近隣の療育施設にて、幼稚園・市の子育て支援課などの関係機関とカンファレンスを開き、就学にあたっての情報共有を行うことと、ご両親の就学先決定に関するサポートをチーム一丸で行いました。
実際に小学校に入学するまでは毎日登校できるか心配していましたが、学校の近くに引越しされたことも功を奏し、毎日登校し、週一日くれよん(放課後等デイサービス)に通われています。
くれよんでは地域の小学校に通う同学年のグループに所属し、10名ほどの集団療育を受けられています。
をねらいとして、クッキング・買い物学習・SST・アート・音楽・工作・運動など、集団療育ならではのさまざまなプログラムに取り組んでいます。
クッキングは扱う調理器具について学び、お菓子作りを行い作ったお菓子を食べるという活動です。グループのなかでペアを組み調理器具や材料を貸し借りしたり、順番を待ったりするなどの経験を重ねることで、友だちと協力しながら活動をするうえでのコミュニケーションを学んでいます。
買い物学習は、交通ルールや公共のマナーを守り、指定されたものを近隣のスーパーまで買いに行く活動です。陳列棚から商品を探し出せない時やわからなくなった時に店員に尋ねることにチャレンジすることで、困ったときの解決方法を学び、社会性を身につけ、「頼まれたものを買えた」という達成感を味わうことができるようにしています。
SSTは、話を聞く態度を学び、「あったかことば」、「チクチクことば」などをみんなで考えたり、話し合ったりすることで、グループで楽しむゲーム(ジャンケン大会やボッチャなど)を通して人とうまく関わるスキルを身につける活動です。 Sくんは勝負に負けることが嫌で、運動会のような競争の要素が強い活動が苦手でしたが、SSTのなかで勝ち負けにこだわり過ぎず、友だちを応援したり、協力したりすることの大切さを学んでいます。
小学校に通い始めた頃は慣れない学校生活での不安感からか、くれよんでのグループ活動のなかで友だちにキツく当たることがみられましたが、不安感をスタッフが受け止めたうえでSくんが活動に入れるように関わり方を統一しました。
活動のなかで不安などから参加を拒否したり離席したりすることもありますが、グループで関わるスタッフ一同、しっかり話を聞き、不安な気持ちを受け止めたうえでどうすれば良いのか一緒に考えることを大切にしています。不安を乗り越え、「できた」という達成感、自己肯定感につなげ、 安定した学校生活につなげていきたいと考えています。